2017-11-13
提言「退位特例法」の無効廃止と帝國憲法・正統皇室典範の復元を
提言 「退位特例法」の無効廃止と帝國憲法・正統皇室典範の復元を
黎明教育者連盟講師 柴田 顕弘
今回、平成二十八年八月八日の今上陛下の「象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉」を受けて六月九日に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(以下「退位特例法」)が国会で成立しましたが、この法案にはいくつかの問題点があります。
まずこの「退位特例法」の第一の問題点として、皇室伝統に基づかない言葉が使われてされていることが挙げられます。『譲位』とすべきところを「退位」としている点で、天皇陛下及び皇室に対する敬意が全く感じられません。
皇后陛下は、天皇陛下のお言葉が発せられたのち、メディアで「生前退位」という言葉が流布されていく現状に、深いご憂慮とご懸念を明確に示されました。それにも関わらず、「生前退位」「退位」なる言葉を使い続け、「退位特例法」という法律まで成立させた政治家・知識人・メディア関係者は、皇室に対する不遜不敬を働いていることを猛省すべきです。
さらに『譲位』は連綿とした皇位継承を前提とした伝統的な言葉であるのに対し、「退位」には、皇室伝統で使われたことなく、しかも最終的に天皇制を廃止するという含意がある言葉だということです。
その他に、今上陛下が譲位なされたあとには、美智子皇后陛下は「皇太后(こうたいごう)」ではなく「上皇后(じょうこうごう)」と称されて、秋篠宮文仁親王殿下は「皇(こう)太(たい)弟(てい)」とより明確に規定されず、「皇嗣(こうし)」とのみ位置付けられます。
とくに注意すべきは、「皇太子」と同位である「皇太弟」を用いない有識者会議や法案作成者の意図はどこにあるかということです。
一つの仮説としては、秋篠宮文仁親王殿下を「皇太弟」でなく「皇嗣(こうし)殿下(でんか)」と御呼びする一方で、皇太子徳仁親王殿下の受禅(じゅぜん)(受禅(じゅぜん)践祚(せんそ))・即位後の「皇太子」の御位が空位状態なることを口実に、愛子内親王殿下を皇太子とし、将来の女性天皇・女系天皇を成立させるための布石として国会で皇室典範改定を謀ろうとしているのではないかということです。
現行皇室典範の第十一条第二項には「親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。」とあり、皇太子・皇太孫以外の皇嗣(こうし)殿下(でんか)であれば「皇室会議の議」によって、「皇族の身分」を離れさせる可能性がでてくる余地もある、と解釈されかねないと思います。そもそも皇室の事を論じる「皇室会議」の構成議員十名のうち、天皇陛下を除く皇族が二名しか出席しないこと自体がナンセンスです。
第二点目として「退位特例法」の作成成立過程自体も問題でした。
政府与党は、今上陛下の御譲位に際して、国会が喧々諤々の議論となり国論が割れることを避け、野党と根回して全会一致の賛成を経て表面的に穏便な法律成立を優先させました。
野党は、この与党の姿勢の間隙をついて、法案に付帯決議に「女性宮家」なる言葉を導入させたのでした。
そもそも、皇室伝統の解体に繋がる「女性宮家」の導入を意図し、いわゆる「天皇制」を廃止することをテーゼとする政党が皇位継承に関する議論に参加すること自体が、国体破壊を促す意図をもつものであることは自明の理というべきでしょう。従って与野党の妥協の産物として成立した「退位特例法」は皇統護持の観点とは真逆の法律にならざるをえないのです。しかも今回の「退位特例法」をめぐる議論において菅官房長官は以下のように答弁しています。「法案の作成に至るプロセスや、その中で整理された基本的な考え方は、将来の先例となりうる」つまり「退位」や付帯決議に明記された「女性宮家」の考え方は、今後の皇室典範改定の議論・法案の「先例」になるという解釈の余地を残した見解を表明したことになります。すでに今上陛下一代限りの『退位特例法』の『特別例外の措置法』という意味がすでに捻じ曲げられている実態を認識しておく必要があると思います。
谷口雅春先生は、ご生前次のように警告されておられました。
「偉大なる芸術家は、鋭敏に対象の生命を観る。そして勇敢に、その生命そのものを筆端に縦横に走らせてそれを描く。偉大なる政治家は、まず国家の生命を把握する。そして国家の生命を生かすために今何を為すべきかを自覚して、勇敢に、芸術家が縦横に筆を走らす如く、縦横無尽に躊躇なく、他人や他党の顔色を見ることなく、断行すべきことを断行するのだ。(中略)
譲歩と妥協による一時的平和ムードで現行の憲法を温存しておく間に、病菌の如くビールスの如く、赤化思想が国内に浸透して、病原体が人体を滅ぼす如く、国家を滅ぼしてしまうのである。」(谷口雅春『私の日本憲法論』)
まさにわが国の現状は、占領憲法を「温存」しつつけてきた結果、国家滅亡への道を歩みつつあるのであり、今回、政府与党が野党との「譲歩と妥協」によって、一連の「女性宮家」付帯決議付「退位特例法」を成立させた結果、更なる国体破壊へ繋がっていくことをも鋭く洞察したお言葉であるといえましょう。
もしも安倍総理が「偉大なる政治家」たらんとするならば、「縦横無尽に躊躇なく、他人や他党の顔色を見ることなく」、現行の占領憲法及び皇室典範の無効を確認し、大日本帝国憲法と正統皇室典範(明治皇室典範)の復元宣言を行うのが、本来とるべき道であったと思われます。なぜなら、皇室伝統・慣習法に基づく『法の支配』の観点からすれば、「悪法は無効なり」であり、わが国の主権が失われた時期に制定された正当性のない占領憲法や占領典範、それらに立脚した「退位特例法」は必然的に無効といえるからです。
では、ここで現行の占領憲法と帝国憲法を比較対照しつつ、問題点と今後の施策について述べたいと思います。。
日本国憲法(占領憲法)
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
占領憲法第一条・第二条を前提とする限り、現在生きている「主権の存する」国民が「総意」の名の下に、歴史伝統や皇祖皇宗・祖先の遺志を無視して天皇の地位を変えることになり、また今回の「退位特例法」のように、国会の議決による法律に堕した皇室典範をいかようにでも改定・改悪し、皇室廃絶・國體破壊を進めて行く帰結をもたらすでしょう。
次に、帝国憲法の第一条・第二条・第七十四条を挙げてみます。
大日本帝国憲法(明治憲法・正統憲法)
第一条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第二条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス
第七四条 皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
帝國憲法第一条では、天皇の永続が条文で確約されていますし、第二条については、伊藤博文公の『帝国憲法義解』よると、皇室典範を「皇室の家法」と位置づけ、「将来に臣民の干渉を容れざることを示すなり」と説明されていました。つまり皇室典範は、本来「臣民(国民)」の干渉は受けない至高の『法』であり、憲法と同格の位置付けで現在のような「法律」ではありませんでした。
因みに明治皇室典範の第一条は「大日本国皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス」とあり、『皇室典範義解』には「皇統は男系に限り、女系の所出に及ばざるは皇家の成法なり」と解説がなされ、皇室の歴史と教訓を踏まえて、皇位継承は男系男子で女系は認めていませんでした。
第七十四条については、「皇室典範は皇室自ら皇室の事を制定する」と「帝國憲法義解」では解説がなされ、皇室の自治と自律が明確に保障されていたのです。
これらの点を踏まえれば、今回の今上陛下の御譲位や安定的な皇位継承に関しても、国会の議決でなく、帝国憲法を復元し正統なる明治皇室典範を皇室に奉還して、旧皇族に皇籍復帰して頂き、天皇陛下中心の「皇族会議」を復活した上で、「皇室が自ら皇室のこと」をお決めいただけるように環境を整えることが『臣民』としての務めでなのではないでしょうか。
黎明教育者連盟講師 柴田 顕弘
今回、平成二十八年八月八日の今上陛下の「象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉」を受けて六月九日に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(以下「退位特例法」)が国会で成立しましたが、この法案にはいくつかの問題点があります。
まずこの「退位特例法」の第一の問題点として、皇室伝統に基づかない言葉が使われてされていることが挙げられます。『譲位』とすべきところを「退位」としている点で、天皇陛下及び皇室に対する敬意が全く感じられません。
皇后陛下は、天皇陛下のお言葉が発せられたのち、メディアで「生前退位」という言葉が流布されていく現状に、深いご憂慮とご懸念を明確に示されました。それにも関わらず、「生前退位」「退位」なる言葉を使い続け、「退位特例法」という法律まで成立させた政治家・知識人・メディア関係者は、皇室に対する不遜不敬を働いていることを猛省すべきです。
さらに『譲位』は連綿とした皇位継承を前提とした伝統的な言葉であるのに対し、「退位」には、皇室伝統で使われたことなく、しかも最終的に天皇制を廃止するという含意がある言葉だということです。
その他に、今上陛下が譲位なされたあとには、美智子皇后陛下は「皇太后(こうたいごう)」ではなく「上皇后(じょうこうごう)」と称されて、秋篠宮文仁親王殿下は「皇(こう)太(たい)弟(てい)」とより明確に規定されず、「皇嗣(こうし)」とのみ位置付けられます。
とくに注意すべきは、「皇太子」と同位である「皇太弟」を用いない有識者会議や法案作成者の意図はどこにあるかということです。
一つの仮説としては、秋篠宮文仁親王殿下を「皇太弟」でなく「皇嗣(こうし)殿下(でんか)」と御呼びする一方で、皇太子徳仁親王殿下の受禅(じゅぜん)(受禅(じゅぜん)践祚(せんそ))・即位後の「皇太子」の御位が空位状態なることを口実に、愛子内親王殿下を皇太子とし、将来の女性天皇・女系天皇を成立させるための布石として国会で皇室典範改定を謀ろうとしているのではないかということです。
現行皇室典範の第十一条第二項には「親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。」とあり、皇太子・皇太孫以外の皇嗣(こうし)殿下(でんか)であれば「皇室会議の議」によって、「皇族の身分」を離れさせる可能性がでてくる余地もある、と解釈されかねないと思います。そもそも皇室の事を論じる「皇室会議」の構成議員十名のうち、天皇陛下を除く皇族が二名しか出席しないこと自体がナンセンスです。
第二点目として「退位特例法」の作成成立過程自体も問題でした。
政府与党は、今上陛下の御譲位に際して、国会が喧々諤々の議論となり国論が割れることを避け、野党と根回して全会一致の賛成を経て表面的に穏便な法律成立を優先させました。
野党は、この与党の姿勢の間隙をついて、法案に付帯決議に「女性宮家」なる言葉を導入させたのでした。
そもそも、皇室伝統の解体に繋がる「女性宮家」の導入を意図し、いわゆる「天皇制」を廃止することをテーゼとする政党が皇位継承に関する議論に参加すること自体が、国体破壊を促す意図をもつものであることは自明の理というべきでしょう。従って与野党の妥協の産物として成立した「退位特例法」は皇統護持の観点とは真逆の法律にならざるをえないのです。しかも今回の「退位特例法」をめぐる議論において菅官房長官は以下のように答弁しています。「法案の作成に至るプロセスや、その中で整理された基本的な考え方は、将来の先例となりうる」つまり「退位」や付帯決議に明記された「女性宮家」の考え方は、今後の皇室典範改定の議論・法案の「先例」になるという解釈の余地を残した見解を表明したことになります。すでに今上陛下一代限りの『退位特例法』の『特別例外の措置法』という意味がすでに捻じ曲げられている実態を認識しておく必要があると思います。
谷口雅春先生は、ご生前次のように警告されておられました。
「偉大なる芸術家は、鋭敏に対象の生命を観る。そして勇敢に、その生命そのものを筆端に縦横に走らせてそれを描く。偉大なる政治家は、まず国家の生命を把握する。そして国家の生命を生かすために今何を為すべきかを自覚して、勇敢に、芸術家が縦横に筆を走らす如く、縦横無尽に躊躇なく、他人や他党の顔色を見ることなく、断行すべきことを断行するのだ。(中略)
譲歩と妥協による一時的平和ムードで現行の憲法を温存しておく間に、病菌の如くビールスの如く、赤化思想が国内に浸透して、病原体が人体を滅ぼす如く、国家を滅ぼしてしまうのである。」(谷口雅春『私の日本憲法論』)
まさにわが国の現状は、占領憲法を「温存」しつつけてきた結果、国家滅亡への道を歩みつつあるのであり、今回、政府与党が野党との「譲歩と妥協」によって、一連の「女性宮家」付帯決議付「退位特例法」を成立させた結果、更なる国体破壊へ繋がっていくことをも鋭く洞察したお言葉であるといえましょう。
もしも安倍総理が「偉大なる政治家」たらんとするならば、「縦横無尽に躊躇なく、他人や他党の顔色を見ることなく」、現行の占領憲法及び皇室典範の無効を確認し、大日本帝国憲法と正統皇室典範(明治皇室典範)の復元宣言を行うのが、本来とるべき道であったと思われます。なぜなら、皇室伝統・慣習法に基づく『法の支配』の観点からすれば、「悪法は無効なり」であり、わが国の主権が失われた時期に制定された正当性のない占領憲法や占領典範、それらに立脚した「退位特例法」は必然的に無効といえるからです。
では、ここで現行の占領憲法と帝国憲法を比較対照しつつ、問題点と今後の施策について述べたいと思います。。
日本国憲法(占領憲法)
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
占領憲法第一条・第二条を前提とする限り、現在生きている「主権の存する」国民が「総意」の名の下に、歴史伝統や皇祖皇宗・祖先の遺志を無視して天皇の地位を変えることになり、また今回の「退位特例法」のように、国会の議決による法律に堕した皇室典範をいかようにでも改定・改悪し、皇室廃絶・國體破壊を進めて行く帰結をもたらすでしょう。
次に、帝国憲法の第一条・第二条・第七十四条を挙げてみます。
大日本帝国憲法(明治憲法・正統憲法)
第一条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第二条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス
第七四条 皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
帝國憲法第一条では、天皇の永続が条文で確約されていますし、第二条については、伊藤博文公の『帝国憲法義解』よると、皇室典範を「皇室の家法」と位置づけ、「将来に臣民の干渉を容れざることを示すなり」と説明されていました。つまり皇室典範は、本来「臣民(国民)」の干渉は受けない至高の『法』であり、憲法と同格の位置付けで現在のような「法律」ではありませんでした。
因みに明治皇室典範の第一条は「大日本国皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス」とあり、『皇室典範義解』には「皇統は男系に限り、女系の所出に及ばざるは皇家の成法なり」と解説がなされ、皇室の歴史と教訓を踏まえて、皇位継承は男系男子で女系は認めていませんでした。
第七十四条については、「皇室典範は皇室自ら皇室の事を制定する」と「帝國憲法義解」では解説がなされ、皇室の自治と自律が明確に保障されていたのです。
これらの点を踏まえれば、今回の今上陛下の御譲位や安定的な皇位継承に関しても、国会の議決でなく、帝国憲法を復元し正統なる明治皇室典範を皇室に奉還して、旧皇族に皇籍復帰して頂き、天皇陛下中心の「皇族会議」を復活した上で、「皇室が自ら皇室のこと」をお決めいただけるように環境を整えることが『臣民』としての務めでなのではないでしょうか。
スポンサーサイト
Powered by FC2 Blog
Copyright © 黎明教育者連盟〜「寺子屋」講師たちのつぶやき〜 All Rights Reserved.